[]「つらい思いをさせてはならない」
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先日、ナショナルジオグラフィック社の資料をつらつらと眺め見ていたら、
1914年、大正3年の記事におもしろいのがあった。
記事を書いたのは、女性ジャーナリストのエライザ・シドモア。
この人は、米国ワシントンへの桜の寄贈に一役買っている。
シドモアの記事で、目に留まったのが、これ。
「明治天皇が冬のある寒い日の朝、地方を訪れた時のことだという。天候はあいにくに荒れ模様で吹雪に近い状態だったのに、子どもたちは必死に寒さに耐え、天皇を迎えたという。ところがその様子を見た明治天皇はいつになくご機嫌ななめで、あとでお付きの者たちに、国の宝である子どもたちに二度とあのようなつらい思いをさせてはならない、と強くおしかりがあったそうだ。」
子どもにつらい思いをさせてはならない。
これ、大人も当然、そうですわね。
大人にもつらい思いをさせてはならない。
考えてみりゃ、人間全体が、そう。
人間につらい思いをさせてはならない。
シドモアは、明治期より何度も日本を訪れ、たくさんの記事を本国アメリカへ送っている。
たくさんの記事と著作を残したが、人生の最後に彼女が書き残した最後の記事は、
1914年の「日本の子どもら」(Young Japan)と題するもの。
彼女の記事は、日本の政治や社会、経済に関することも多くあったが、それにおとらず、日本の風俗習慣、ことに子育てに関してのことが多かった。
そして、日本の子どもの写真を、たくさん撮っている。
「こんなに大事にされている子どもたちを見ているのは幸せ」
1928年11月3日、ジュネーブで死去。72歳没。
遺骨は遺族の意志で日本に送られ、埋葬された。
横浜外国人墓地に墓所がある。
「わたしが世界中をめぐり、もっとも美しいと思うのは、日本の桜である。
桜をみながら近隣家族が花見をする習慣は、本当にこの世の天国かと思う」
帰国したシドモアは、花見の習慣を大統領の夫人に話したそうです。
どんなふうに話したのか、興味ありますね。
シドモアは、日本人たちが花を見ている姿を見て、その、いったいどこに興味を惹かれたのか。
なにを素晴らしいと思ったのか。
「つらい思い」をしないでいられる、ということの意味と、
その花見の光景とが、シドモアの頭の中で重なったのではなかろうか。
今でも、ワシントンでは桜まつりがあるようですね。
2017年の全米桜まつりは、3月20日から4月16日まで開催されたそうです。