[]体育器具庫には入ってはいけない!
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体育館での授業。
体育器具庫に、貼り紙がしてある。
「この中には入りません」
わたしが、
「この中には、入ってはいけないの?」
というと、子どもたちはみんな、うん、と頷く。
教室に戻ってきてから、再度、みんなに聞くと、
「入っちゃいけないんだよ。めっちゃ怒られるよ。高学年に!」
高学年の運動委員会の子たちが、休み時間にはボールを出したり、休み時間が終了する間際になると声をかけて、とくに低学年の子たちに教室へ帰るよう、うながしている。
委員会の仕事だから、高学年のお兄さんやお姉さんたちがしてくれているわけだ。
Rくんが、
「だめだよ、入ったら、叱られるよ」
と何度も繰り返す。
むかし、器具庫に入って遊ぼうと入ったら、めっちゃ叱られたらしい。
「去年のU先生も、だめだって言ってた」
わたしが、
「あの貼り紙がいけないんだなあ・・・。よし、あれを取っちゃおう!」
と提案すると、目をまるくして、
「ダメだよ!!」
の大合唱である。
「だって、先生は入りたいんだもの」
「え、先生はいいんだよ」
「あ、そう?でも、入っちゃいけないのでしょう」
「先生はいいんだよ、あれは子どもに言ってるんだし」
「なんで子どもだけダメなの?」
「えー」
ここで、ちょっと空白のできるのが、面白い。
ちょっと賢い子が、言い出す。
「子どもは怪我をするからだよ。マットがあるし、ほかにも金属の棒とかあるから」
みんな、そうだ、そうだ、と言う。
「なるほど、そうか。けがをするかもしれないんだね」
わたしは、黒板に
「この中には危険なものがあるので、ケガをしないように気をつけましょう」と書く。
「あの貼り紙が、本当に言いたいのは、こういうことかなあ?」
「うん、まあ。そうかも」
それじゃ、そう書けばいいじゃない。
なんで、入ってはいけません、なのかしら。
すると、ある子が、
「ぼくたち(4年生)は、もう分かるからいいんだけど、1年生とか分からないからじゃない?」
なーるほど。
よく考えるなあ。
そこで、わたしが感じ入った様子で、
「なるほど。1年生の子は、そんなこと言われても、なにが危険かどうかも分からないからかもねー」
とつぶやくように言うと、みんなも同意する。
「じゃあさ、1年生は入ってはいけません、というのでいいのじゃないの?」
もう一度、わたしが意地悪く意見を追加すると、
「うん。そうかも。低学年はいけませんにしたらいい」
と同調する子も現れる。
「でも、それじゃあ、低学年だけに意地悪してるみたいになるよ」
難しいねえ。
では、一番いい貼り紙の仕方はなんだろうか。
わたしは、さきほど書いた文面の最後に追加した。
「〇この中には危険なものがあるので、ケガをしないように気をつけましょう。
〇低学年の子は、もしかしたら怪我をするかもしれないので、入らないようにしましょう」
こういうことね。
ところで、われわれ4年生は、どうする?
「入れるけど、それでもやっぱり、怪我をすることがあるかもしれないから、やっぱりまだ入らない方がいい」
じゃ、そうするか。
昨日、器具庫に内緒で入っていたSくんも、みんなと同じように、「入らない方がいい」 と真剣な顔で言うのが面白い。