[]決定権について整理する〜子どもと親と〜

.

テレビのチャンネルは、親が決めていますか?

少なくとも、子どもは提案する立場、決定するのは親です。

決定とは、最終的に決めていく、ということです。



ふだんは、子どもが、自分の見たい番組を好きに見ている。

それでいい。

ところが、親が一言、「終わり」と言えば、即座にテレビは終わりです。

あるいは、親が「今日はこれを見るよ」ともしも仮に、言った場合は、

子どもは素直にチャンネルを変えるのです。



○お母さんに向かい、「ぼくに謝って!」と謝らせる。

○「ぼくがえらぶ!」といつまでも主張し続ける。

○親の言うことを聞くから、その代わりこれやって!と親に向かって注文をする。




これは、決定権が親よりも自分の方にあると思い込んでいる子の姿です。

日々、「決定権は親にある」ということを、いろいろな場面で、子どもには教えていくべきだと思います。

決定権がお母さんにある、だからぼくは安心できる、と子どもが心底思えて、母にゆだねられるというのがいいですね。

そのためには、子どものうしろを歩くことです。子どもが先頭を行き、その後をついていく気持ちが要るのです。



「どういうこと?」

と思われましたか?



親が決定権を持ち、先頭を行く、のではなく、

親が決定権を持ち、うしろからついていく、のです。



ここが、講座で話していても、よく誤解されるというか、「よく意味が分からない」といわれる部分です。つまり、通常の考えでいけば、



「決定権を親が持つというんだから、陣頭指揮を執って、子どもの前を歩いていけ、ということなのでしょう?」



というわけです。



ところが、ちがうのです。決定権をもった親が先頭を歩いていると、子どもは育たないのです。







うしろからついていくためには、事前に十分に、準備が必要です。

子どもに何をすればよいか、どうすることが自分にとってよいのか、を考えさせ、親の意見を伝えておくのです。すわなち、それは、「教える」、ということです。



前回の記事では、スーパーの駐車場でのふるまいを例にあげました。車を停めたら、すぐにドアをあけて、飛び出していってはいけない、ドアをそっと開けて出たら、必ず親と一緒に歩く、ということを教えるのです。そして、それがやれたら、すかさず、それでいい、という確認を子どもに伝えます。分かってくる年齢になれば、いいよ、と一言短く言うか、ニコッ、で済みます。まだ幼少の子には、どうしてそれがお母さんにとって嬉しいのかを、事故の例などをあげながら、きちんと説明するのが良いでしょう。



たまの土日、家族で遊びに行こう、ということもありますね。親が行先もやることもすべて決めるのではなく、いくつかのアイデアを出しながら、子どもに決めさせるのがいいでしょう。土日の遊びのメニューを考えさせたり、次の日の夕飯のリクエストをさせたりしながら、可能であれば、子どもの意見を尊重して、できるだけかなえてやります。

いつ寝るか、何時に起きるか、いつ歯磨きするか、などの生活スケジュールのことやお金に関することなどは親が決めるでしょうが、テレビのチャンネルの選択、くつをそろえる位置、もののしまう場所など、親が最終決定するけれど、子どもが考えてよい範囲(選択可能範囲)があるのであれば、子どもの意見に添うのです。



選択させる、というのがおすすめです。A案とB案とC案を子どもに提示します。ふさわしくないけれど、子どもが言いそうなD案は親があらかじめ取り除いておくのです。AとBとCだったらお母さんはどれでもいいよ、というのです。そして、そのどの案も、子どもが選んだ案については、子どもが「選んでよかった」と思えるように親が全力でサポートします。結果、子どもが笑顔になったら、「いいアイデアを選べてよかったね!」と共感します。子どもは親の笑顔を望んでいます。だから親は「この範囲がよい」と前もって子どもに伝えるのです。



もちろん無理なことは無理で、親が最終決定をします。要するに、

「子どもが何を決めてよいか」ということの最終決定を、親がするのです。



物事の最終決定権が親になくて自分にあると思っている子は意外と多くいます。その誤解を解くために、時間をかけて、少しずつ教えていくことが大事です。



大人が話をしている途中で、口をはさむ子がいますが、それがチャンスです。「今は大人が話をしているから、黙って聞こうね」と言って黙らせます。子どもは怒りますがひるみません。そして、「注意されてあなたは悲しかったでしょう。お母さんも悲しかった」と伝えます。悲しみ、という感情を教えるのです。「怒り」ではなくて。



会話は一人ではできません。必ず相手がいます。そして、相手を尊重するものです。自分が仕切っていいものではないのです。会話は毎日のことなので、「会話に口を挟まないのは、相手を大事にすること」という意味は、子どもに浸透していきやすいです。相手の会話に口を挟まない子ほど、自分の意見を言う番になったときに、安心して思い切り自分の考えを言えるようになるものです。区別をつけられるようになったからですね。



教育機関誌 連載コラムより)



花と水滴黄色