[]落とし物について

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教室に上着が落ちている。



授業が始まる直前だ。



当人は、気づいていないようだ。



どう声をかけるか。





「落ちてる。拾いなさい」



でもいいし、



「あ、落ちてるよ」



でもいいし、



「あ、上着だ」



でもいいし、



まあ、ぶっちゃけ、なんでもいいです。



つまり、いいとか、悪いとか、そんなものはありません。









しかし、この声かけひとつにとっても、子どもがうんと、満足する声かけがあります。



セリフは、決まっていません。



わたしも、その時々で、ころころ変わります。



しかし、意識することはあります。



子どもが、ああ、よかった、と思えるような。



ああ、拾おう、と思うような。



ああ、気づいてよかった、となるような。



なんだか、うれしくなるような。



生きててよかった、となる声のかけ方があります。



方法とかセリフじゃないけど、ありますね。







たぶん、こういうことの積み重ねで、学級というものは、つくられていくのでしょう。

コミュニティというのは、つくられていくのでしょうな。

だから、子どもも大人も、みんなでつくっていくものなんだろうな、と思います。





わたし、こういことがいちいち考えられるので、



こころの中では、教室にものが落ちているの、うれしいです。







だれかが言い争いをしたり、けんかをしたりするときも、同じです。



心の底では、嬉しい気持ちがありますね。







昔はこうじゃありませんでした。



まずい、という思いが真っ先に出ました。



これをうまくさばかないと、学年主任の先生になんと怒られるか、と生きた心地がしませんでした。



けんかの仲裁、もし失敗したら、子どもたちから信頼されななくなるのではないか、とびくびくしました。



なんせ転職組の中途採用

しかも、教育実習なし。



初任研もろくにないような状況で、孤軍奮闘しなければならない、と自分で決めていましたから。



自分はまだ教員にはなりきれていないのだ、ということの不安は、とても大きいものがありました。



「自分は、今のまま、このままではいけない」



と、↑ こういう不安って、



気持ちや行動を、大きく変えるものですナ。







しかし、



「叱らないで、困らないで、やってみよう!」



と見つけると、もう後戻りはできなくなりました。



というわけで。







落し物も、忘れ物も、どんなことも。



困らないでも、いいですか。









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