[]「あのお兄ちゃん、ぜんぜん挨拶しないよ」 さてあなたは・・・?

1年生の担任だったわたしの耳に、こんな言葉が聞こえてきました。



「ねえねえ、先生。あのお兄ちゃんったらね、ぼくがあいさつをしているのに、ちっともあいさつしてくれないんだよ」



かわいい目玉をくりくりさせながら、背の小さなMくんは、高学年のお兄ちゃん達の姿を、チクリ、と言いつけます。



「そうなの。Mくんは、きちんとあいさつをかえしてほしかったのね」



わたしは朝一番の忙しいときですが、宿題のプリントをめくりながら、できるだけ反応してやります。



「そうそう。ぼくはちゃんと、大きな声でおはようございますを言ったのにね」



「そう。えらいねえ。Mくんは、おはようございます、を言えたんだねー」



「高学年の人のほうが、ぜんぜんあいさつをしないんだよ」



まだ、Mちゃんは、不満そうです。



さて、どう対応しますか?









これ、いろいろと考えがあるでしょう。



教師として、どんな対応をとるのか。



その先生の、考えの中心、「軸足」が見えてきます。







どこに、もっとも、考えの重点をおくのか。



指導の重点をおくポイントによって、さまざまな対応が生まれるでしょう。



そして、その指導によって、半年後、1年後の、教室の雰囲気まで、なんとなく想像がつくなあ。







さ、次のどれ?



1) ちょっと高学年のお兄ちゃんたちを呼んでくるから、ここで待っててね。



本当に高学年のお兄ちゃんが本当にあいさつをしないで通り過ぎたのかどうか、Mくんがいい加減なことを言っているのかどうか、きちんと真実を確かめる。



2) お兄ちゃんたちに、きちんと挨拶をしてもらおうね。



高学年のお兄ちゃんたちを呼んでて来て、Mくんの目の前で、「高学年はお手本になるんだから、きちんと挨拶をしなさい」と指導する。



3) いけないお兄ちゃん達だねえ。



あいさつもしない高学年なんかにならないように、Mくんは立派な高学年になれるよう頑張るんだよ、と諭す。







これ以外の対応もゴマンとあるでしょうが、いずれにしても、どんな「軸足」スタンスかによって、半年後、1年後、もっといえば、10年後、30年後までが見えてきそうです。



これだけでも、一晩、語り明かせそうですねえ〜





(新間は4番の・・・・)

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さて、続きです。



この、「挨拶を返してくれない」、というの、ハッキリ言って、



尋常ではない、と思います。



そんなチンケなことで、口をとがらすのなんて、普通はありえない。



ふつうの子は、そんなことに文句を言って、自分の貴重な時間を費やすことなど、しません。











なぜ、このMくんは、こんなことに、



ひっかかって




いるのでしょうか。







これ、おそらく、なにか、お母さんと、いざこざがあったか・・・



朝一番に、兄弟げんかをしてきたか・・・







教室に入ってきてから、だれかに何か、気に食わないことをされたか。



宿題が分からないので、それがとーっても不安だったり、



4時間目の音楽の授業で、あの眼鏡をかけた先生に会うのが不安なのか、



2週間後の、ピアノの発表会が不安なのか、







要するに、この、高学年のお兄ちゃんの行動が云々、ということではないのでしょう。



そんな、お兄ちゃんの挨拶なんかよりも、もっと切迫した、逼迫した、ともかくも、なにか不安を抱えているのです。



それを、表現できないでいて、悶々としているわけね。







目の前の兄ちゃん(挨拶をしなかった)は、たまたま、いいネタにされてしまっただけで・・・











それを考えると、前述の、





2) お兄ちゃんたちに、きちんと挨拶をしてもらおうね。



だの、



3) いけないお兄ちゃん達だねえ。



だのが、





いかに、Mくんの求めている対応から、遠くにあるのかが分かります。