[]開店ダッシュ!

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10時開店。



店の前はもう混雑しだしてる。



「へえ、けっこう、お客さんが並ぶんだな〜・・・」




軽快な服装をして、買い物バッグを肩から下げたおばちゃんたち。



熟年層の元気な姿を見ながら、ボーッと感想をもつ。



いやいや、ボーッとなんて、しちゃいられない。



貴重な休日、買い物に許された時間はわずか、だ。

気を引き締めて、トイレットペーパーの絵柄をイメージトレーニングする。



「あれ買って、その後、これ買って・・・」



買い物リストの順をイメトレしながら、わたしは心拍数を高めていく。







夏服姿のおばちゃまたちと、同じテンションでドアが開くのを待ち、



さっそく!!



お目当てのトイレットペーパーに猛然と襲いかかる。



手前を歩いている、背の低いおばさんの頭ごしに、ひょいとつかむ。



そのまま野菜売り場の日曜朝市コーナーを素通りして、

調味料コーナーの特売サラダ油をめざす。



オッケー!



調味料コーナー、まだいける!それほど混雑してない!





特売なのに、まだ5,6人しかいない。

混雑度が高くないし、

おまけに、おばさんに比べてスピードに劣る、おじさん連中がいない。



今のうちだ!





陳列棚の間(あいだ)、カートをすごいスピードでころがしながら、

瞬時に混雑度を行う。



調味料、魚、パンのコーナーは今の時点でイエローだ。

4割引の冷凍食品、入り口近くのトイレットペーパー、

おまけに朝市の野菜コーナーはすでにレッドゾーンだろう。

 





あっ!







視界のすみに、インスタント珈琲のビンが目に入る。

値段の安い、黄色の値札だ!



広告商品の証拠である。



わたしは、とっさにカートを右折させた。



小さなタイヤがきしみ、ドリフト状態になる。



おおっ!

ゴールドブレンド!安い!



これは学校の職員室用で確保。



思わぬ掘り出し物に、頬がゆるむ。

ふたたびカートの速度を増しながら、一人でニタリとする。







野菜売り場はあと1時間はレッドゾーンだろう。

先に、余裕のあるコーナーの買い物を済ますのが、こんな日の、賢いふるまい方、というものだ。







ちなみに特売日は、



おじさんの動き方や歩き方



に注意すること。






おじさんはほとんどが

おばさんにリモートコントロールされているので、

動きがにぶく、スローモーだ。



その点、おばさんは自分が財布を握っているので、判断が速い。



おじさんは、いちいち、女房の顔を見ながら

その指図を受けて動くので、ウゴキが遅いのだ。







「あんた!それはお一人様1点だから、そこ動かんどいて!」



突如あがった、大声の指示!





見ると、目をしょぼしょぼさせたおじさんが、

大急ぎで叫ぶおくさんの言葉に、

あ、あ、とうろたえながら歩いている!





「危険だッ !」






カートを旋回−−−−− !!

面舵いっぱいだ !



案の定、おじさんは

サラダ油の前で立ち往生。

道をふさいでしまったこのおじさんをにらみつけながら、

周囲のおばさんたち、わたしと同じようにカートを旋回させている。



おじさんは本当は善い人だが、みんなに避けられてしまう。





「よおし!!

あとはバナナだ!」






ズゴゴゴゴゴォォォォおおお!!



頭の中に、マンガのような効果音が響き渡る。







おばさんたちの喧噪が響く朝市コーナーに、呼吸を止めて、一気に突っ込め!



わたしは、腕をナナメ45度に保ったまま、カートを押して進む。



この体勢をとるために、わざわざジャージを穿いてきたんだ!





脳みそコンピューターが、100gでいくらか、という

計算を始める。



・・・○○グラムで○○円ということは・・・えっと○○÷△△で・・・だいたい・・・





安い!やはり広告商品だ!



あっちのスーパーより、こっちのが、安いっ! (数円だけど)





バナナを2房、放り込んで、





今度は少しでも空いているレジへ!







あのおばさんよりも早ぁく!!





すると、店員が2名協力して清算するレジを発見!これはチャンスかも!







「急旋回っ!!」

頭の中に、戦艦ヤマト古代進の声が響く。





案の定、隣のレジの、しゃれた紫色の服のおばさんよりも

1人分だけ、こっちが速く計算してもらえた!!





・・・やれやれ、買い物って、けっこう激務だね・・・。



(*´з`)



P1000214


写真は、返還前の10香港ドル