[]変わる美術館・変わる博物館

フランスの美術館には、子どもが毎日のように通ってくる。

日本で言うと、地域に根差した、図書館のように。



美術館なんて、辛気臭い、わけがわからない、静かにしていなきゃならない、というので、子どもからは敬遠される場所だと思う。



しかし、さすがはフランス、そこはかなり、考え方が違う。



日本のように、だまーって、しずかーに、まるで仏像を拝むかのように、一つひとつを、凝視していく「鑑賞スタイル」は、あまり普遍的ではないとのこと。



フランスでは、美術品を見る際に、あれこれと自由に見ることを楽しむために、会場でいろいろと工夫してくれている。



フランスの学芸員さんたちの、思考・志向が、顕著に、日本とは異なるのだという。



フランスの方たちは、



「子どもに味わってもらってなんぼ」



というところがあるのだろう。



たとえば、絵画には、クイズが併記されていて、



「思いつかないときは、近くの誰かと相談してみて!」



とか、まるでおしゃべりを促すような掲示がしてある。



日本のお堅い頭の学芸員さんたちからしたら、まるで戦慄を覚えるような、悪魔のささやきが記されているわけ。



大体、おしゃべりしながら、美術品やら工芸品、博物館の展示物を、見てよいものか。



日本人なら、そう考えるだろう。



こういった場所では、何よりも優先されるのが、「静けさ」である。



この静けさを片時でも揺るがすべきではない。



うるさい子どもは、できるかぎり、美術館から排除するべきだ。



「うるさいガキは、こなくて結構!」



これが、日本の博物館ね。









で、子ども向けに語りかけた、このような美術鑑賞アプローチが、実は、何よりも、



フランスの大人に、受けた。





・・・(笑)





入場者数が増え、市の財政に寄与する美術館が増大したそうであります。

そのようなわけで、フランスでは、美術館が、それなりに、アクティブで、パッシブで、アクロバティックになっているようなのでありました。





※Visual Thinking Strategies (ビジュアル・シンキング・ストラテジー)について



グループで対話をしながら、絵をみていく鑑賞方法。知識に頼らずに、作品をよく見ることからはじめ、「これは何だろう?」と一人ひとりに考えることをうながし、様々な意見を引き出しながら、作品の見方を深めていく。1988年からニューヨーク近代美術館(MOMA)で美術鑑賞法として開発されたVTC(Visual Thinking Curriculum)を当時の教育部長フィリップ・ヤノウィンとアビゲイル・ハウゼン(認知心理学者)がより学校教育を意識して進化させた。アメリカでは約300の学校および約100の美術館・博物館が導入している。