[]読者諸兄は、『超能力』をご存じだろうか?

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超能力とは何か。



辞書をみると、



人間の知覚以外の力、テレパシー・テレキネシス・テレポーテーションなど、常人にはない力のこと。


とある。



クラスに、超能力者が存在するとしたら、担任はどうしたらよいのだろうか・・・。



chounouryoku




わたしは10円玉をもち、クラスの子どもたちに告げる。



「いいですか。人間には第六感とよばれる、通常の思考とはまったく異なる脳のはたらきがあるそうです。その超能力によって、なぜだか正解が分かってしまう、ということがある。みなさんはどうでしょうか・・・」



わたしがいつもにない、妙な声色で、まるでテレビ番組の司会者のような語り口調ではじめたもので、みんななんだかニヤニヤする。



「今から、この10円玉を、背中にかくして・・・(と両手をうしろにまわして)どちらか一方の手のひらでにぎります」



これを当ててもらうのだ。



全員、起立し、ごくり、とつばをのみこみながら、わたしの両手を見つめる。



「さあっ!!どちらの手にあるのでしょうか!!」



右、とか 左!とか、言わせます。



「念のため、お隣さんにも言いなさい」



ズルができないように、仕組んでおく。



パッと手の中をみせ、右手の中にあったことを見せる。



「あてることのできた人のみ、立っていなさい。まちがったら座りなさい」



これを繰り返すと、5回連続でなぜだか当たってしまう子、というのがいる。



本人も、



「あれ、なんで当たるんだろう?」



と不思議な顔をしている。



「Fくん、あなた、まさか、自分の特殊能力に、まだ気が付いていないのではありませんか?」



とわたしがマジな顔をして言うと、



本人、笑いながらも、なんだか不安そうな顔になってくる。



「Fくん、あなた一人だけです!!5回も連続で正解!これはすごい能力!!」



わたしが興奮した口調で言うと、クラスが騒然としてくる。



「ほかの子は、全員、間違えています。なのに・・・・・・あなたは当てた!!」



最後の、



あなたは、当てた!



を、ものすごい口調で、目をまん丸に見開きながら断言するように言うと、なんだかすごい雰囲気。







ざわめきをしずめつつ、手をヒラヒラとさせ、クラスのみんなをなだめ、



「念のため、今から先生が、3桁の数字を思い浮かべます。まさか当たらないと思いますが。・・・Fくん。あなた、それを当ててもらえますか・・・」



とおごそかに告げ、手のひらで目の前の空気をつかむような格好で、目を閉じ・・・



「どうぞ」



と言うと、Fくんが、おびえたような顔で



「えっと・・・568」



わたしは最大限に驚きつつ、



「ええええええーーーーーッ!!!だい、だい、大正解!!すげええ〜!!」



このくらいから、クラスの半数はにやにやしはじめる。







「もういちど、お願いします。今度は、先生が、ある寿司のネタを思い浮かべます」



寿司をにぎるマネをして、目をつぶり、しずかに5秒ほどおいて・・・



「はい、どうぞ」



「えっと・・・いくら?」



「ぎょええええええーーーーッ!!!今度も当たったッ!!超能力だ、エスパーがいたぁッ!!」





同じように、昨晩先生がたべた晩御飯や、この冬休みになにをする予定か、好きなじゃがりこの味など、いろいろと当てさせる。



すべて、「正解!」と言う。



後半は、Fくんも笑いながら、変なことを言うようになる。



それら、すべて、「正解!」である。





先生の初恋の人の名前は?



小野妹子ッ!」



「正解!」






先生が家で飼ってるのは?



ゴジラ!」



「正解!」






飽きてきたところで、みんなでエスパーに拍手をして終わり、すぐに休み時間にする。





それが不思議なことに、



エスパーの子、次の休み時間に、なんだか人気者になってるんだよね。

だいたいこれやると、



みんな、すぐにエスパーに話しかけるのヨ・・・。

楽しそうに。






子どもって、面白いネ。