[]「やらない勇気」が語られない件

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イランの国家転覆がアメリカの策略だったことがNHKスペシャルで堂々と放映されていた。(※NHKスペシャル 新・映像の世紀「第4集 世界は秘密と嘘(うそ)に覆われた」)



わたしは、NHKの番組を社会の授業で、かなり扱っている。

どんな番組で、どんな放映がされていて、どんな情報が流されたか。

そして、そのことと、今学習していることを関連付けて、意見を言いなさい、と。



(ただし、子どもたちのテレビ離れは、かつてないほどだ。我々が8時だヨ!全員集合、を見ていた時代とは、子どもたちのテレビに対する意識まったく異なっている。テレビは、時間が余った場合の、残った方の選択肢、になっている。)



太平洋戦争が、なぜ行われたのか。

勝てる想定が、最後まで喧伝されていて、負けるリスクはなぜ、語られないままだったのか。

なぜ、「景気のいい話」を耳障り良く感じるのか。

逆に、「威勢の良くない話」はなぜ、意気地なしの、弱弱しい意見のように聞こえてくるのか。



戦争を、「やらない勇気」については、語られることがなかったのだろうか。



こういう話を子どもたちと追究していると、

人を操作する
ということについて、子どもたちなりに、考えていくようになる。



長崎がローマ領になったとき、キリシタン大名に銃を少しづつたくさん与えて、一度に返済を迫った宣教師のやり口に子どもたちは驚いていたが、そこらへんから、



「人や政治を操作する」



ということについて、なんとなく子どもたちが敏感になってきたように思う。



また、イギリスをはじめとした列強が清をアヘン漬けにして亡国化したことや、アメリカ大陸の先住民に対する侵略、不平等条約なども、人や国家を操作しようとする力が働いた結果。



こういうことが教科書に載っているので、子どもたちがいちいち、ひっかかっている。

あまりにも、自分たちの置かれている今の状況とちがうので、にわかには信じがたい、という感じか。

イギリスでは18、19世紀、貧乏人の子どもは炭鉱の中でほぼ奴隷のような扱いを受けて働かされていた、ということも、ほとんどの児童が、それを「信じがたい事実」として受け取っていたように思う。先生、本当?と訊き返した子がいたからネ。



今回の、



「イランの国家転覆がアメリカの策略だった」



ということも、人を操作する、ということにつながる事例だから、もしこれを見た子がいたら、おそらく何かを考えるだろう。



番組では、スターリンFBIがスパイ合戦を繰り広げ、赤狩りでハリウッドの俳優たちが軒並み魔女裁判にあったこと、KGBによる粛清で強制労働が行われたことなど、人を恐怖で支配しようとしたことがこれでもかと強調されていた。



また、イランの政権打倒が米国のスパイ活動によってあっけなく成功し、親米のパーレビ国王が政権をにぎったこと、米国の石油企業が利権にありついたこと、しかしその後、主権を無くしたことに気付いたイラン人による革命(イラン革命)で一気に情勢が変わったことなどが紹介されていた。



人から操作される、

人を操作する。




どちらも、考えていくテーマ。







広島の原爆や終戦、沖縄が占領されたことなど、このところずっと、歴史学習は重いテーマが続いていた。



単元の最後の方で、子どもが



「殺された話ばかりだけど、殺した話もあると思う」



と感想に書いていたけど、するどいな、と思った。



教科書には、殺された話が多いけど、戦争でもなんでも、物事には二面性あるから、殺した方の話もあるだろう、というのである。









子どもは、真剣に生きようと思っているものである。

一生を大事にしよう、という思いは、大人以上のものがあると思う。

だから、

〇人を操作したり

〇人から操作されたり
ということにも、敏感なのだろうと思う。







こういう子どもの姿をみたときは、正直、



この子たちはすごい



と思う。



教員の仕事の、一番いいところは、子どものすごさを、目の当たりにできることだネ。



足跡5




(※NHKスペシャル 新・映像の世紀「第4集 世界は秘密と嘘(うそ)に覆われた」)

2016年1月24日(日)午後9時00分〜午後9時49分

2016年1月27日(水)午前2時20分〜午前3時10分

2016年2月5日(金)午前1時30分〜午前2時20分