[]目の無いネコの話

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「先生、目の無いネコがいるよ」



子どもから、時折、とんでもないことを知らされることがある。



学校にいるのではなく、登下校中の美容室の駐車場にいるのだそうだ。



世の中はシリアなど中東のことや、テロの話、ドイツとフランスの蜜月などの政治的な話題に加え、R-1グランプリ、寒波強風の自然災害、その他で話題は尽きない。





しかし子どもたちにとってのもっとも身近でビッグな話題は、登下校中の不思議な出来事である。



「知ってる。子ネコでしょう。両方とも目がないんだよね」





子どもたちの情報密度は高い。





ネコは、木にぶつからないで歩くらしい。

ある子が、自分が見た事例の報告をしてくれた。



美容院から中学校の校庭まで、よく歩いている。

校庭の植え込みのところで見た、という子が何人かいた。

地面が続いているから、事故にも遭わないし、たぶん大丈夫なのだろう、ということだった。







「目がないのに、ふつうに歩いているよ」

「不思議なことだねえ」






ネコについて、わたしが聞いている限り、



〇かわいそう

〇気持ち悪い




という感想は、子どもたちからは聞かれなかった。

かわいそう、気持ち悪い・・・。これで、コトを済ませようとする簡単な言及の仕方は、あまりリアルじゃないからかもしれないね。だって、目の前で生きて歩いているのを、大部分の児童が見ているんだから。もう、自分とそのネコの関わりがあるんだから、そんな安易な言及の仕方にはならないんだろう。



・・・



「美容室の人が、餌あげてるんだって」



帰りの会が終わって、帰る間際になって、もう一度、ネコのことを子どもが話してきた。

その子は、新間先生がネコを気にしているから、教えてあげよう、と思っていたのだろう。

その子の言葉の、「〜なんだって」、という語尾から、伝聞情報だということが分かった。

ということは、この子も、誰かからそのことを、聞いたんだ。

彼女も、そのネコがきちんと餌を食べているかどうか、気になったんだろうな。

もしかしたら、この子だけじゃないかもしれない。

ネコの食事のことを、多くの子どもが気にしていた、という背景があるのかも。





その後、

〇ネコには親がいること、

〇その親が、黒猫であることなど、

大人が知らなかったような情報が、子どもたちの間ではきちんと共有されていることが分かった。



こんなこと、マスコミは取り上げないし、大人も話題にしないし、職員室でも誰も言及しないから、ちっとも知りませんでした。でも、子どもたちは、かなり大きなニュースとして、YAHOOニュースの見出しなんかよりもずっと身近なニュースとして、きちんと把握し、なにごとかをそこから感じ取っていたわけで・・・。





世の中、知らないことの方が、多いな。





写真は、雪のトラ。



虎雪