[]せっかくうまくいったのに。
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たまに、低学年の教室をのぞくことがある。
熱を出して休まれた先生がいて、急きょ、わたしが朝の様子を見に行くことになった。
教室まで行くと、なんだかワイワイ騒いでいる。
無理もない。
いつもはいるはずの先生がおらず、見張っている人もいないので、しゃべったり立ち歩いたりしてる。
わたしが前のとびらを開けると、びっくりした目がいっせいにこっちを見た。
何も言わないのに、静かに席に着く。
そして、なんだか慌てて、本を出して読んだり、ノートを出したりする。
こちらをチラチラ見て、
(あの先生、5年生の先生だよ)
ナイショばなしの声で、力強く、わたしのことを言ってる。
今は、朝の学習の時間。
何も言わないのに、ほとんどの子が席に着き、すぐに学習を始めたので、私は少し拍子抜けした。
どうも、子どもというのは面白いものだ。
高学年の先生たちのことを、なんだか怖い先生だと思っているようで・・・。
私がそばを歩くと、緊張した面持ちで、みんな勉強をするふりをする。
面白い。
目の前の男の子が、漢字をたくさん書いたページを出して、澄まして字を書いていたので、
「すごいねえ。漢字たくさん書いてるねえ」
と声をかけると、男の子は、にんまり、した。
私は、字もきれいだし、なかなかやるじゃないか、と思って、この子にもう一度、
「すごいよね。朝からもうこんなに書いたの!!」
とびっくりすると、彼は、さらに、さらに、にんまりし、笑みを浮かべて、まるで大黒様のような表情になった。
すると、隣に座っていた、目のくりくりした小さな女の子が、かわいい声で指さし、
「ここ、まえに、かいたところだよ」
って。
わたしは、黙って男の子を見た。
彼の顔は今度は、口を一文字にむすんでおりました。
そして、黒板の上の方をみて、目をパチパチしておりました。
せっかくうまくいった、と思ったのにねえ・・・。