[]【5年社会・くらしと情報】コメンテーターを演ずる

.

常識から外れている、というので、小学校の先生なんかは特に非難される側に立つ。



「世間知らずだからね」



というのは、やはり教員がよくさらされてしまう非難の言葉であります。



私なども、どちらかというとそう言われてしまい、なるほど、世間を勉強しなければならん、というふうに反省しながら聞いております。



幸い、まだ教員になって「新米」の方でありますし、転職組だということから、保護者の方に言われるのは、



「先生のように、世間を見てきた方に担任してもらえる方が安心」



という感じでお話され、これは恐ろしくて、とても受け入れにくい言葉ですね。



なぜなら、とても、「世間を見てきた」などと、胸を張って言えるようなことがないからで・・。





うちのおやじは住宅会社のサラリーマンでしたが、自分のことをよく、「世間知らず」と言っていましたなァ・・・。



「お父さんも長く勤めてきて、少なくとも不動産の世界は地獄だということが分かったが、それ以外は分からんなあ」



と、言ってましたっけ・・・。



そして、今は何故だか喫茶店のオーナーをしているのですが、常連のお客さんたちが語る話を聞きながら、



「世間は広いなあ〜」




と思うのが常だそうで。









さて、総理大臣をしている方が、世間を知っているかと言うと、どうもそうでないらしいことから、政治家が世間を知らないのは、もうほぼ、確定的といってよいでしょう。



では、お医者さんはどうでしょう。

私の知人のお医者様は、



「医者の世界はずいぶん偏っていますから、私も本当に世間知らずで」



と、ついこの間、しゃべっていました。



さて、世の中の多くの人は、「世間知らずはよくない」という意識でいますが、本当に世間を知っている人は、一体、どこにいるのでしょう。



おそらく、テレビでコメントをする人たちなんじゃないか、と思います。

自信満々でコメントを出せるという態度そのものが、



「わたしは少なくとも、世間を知ってるんで」



という感じですからね。









5年生の社会科、「わたしたちのくらしと情報」という単元を進めています。



テレビ局や新聞社の仕事が、どう進められていくのかを勉強しています。



そこで、テレビ番組のよくある形として、

ニュース(事件)⇒番組制作側のコメント(送り手)⇒視聴者(受け手)


の流れを図解し、この情報の送り手が何をどんな調子で言うかで、視聴者はいろんな感想を持つ、という普遍的な情報の流れを学びました。



コメンテーターが、



「どうも、分かんないですね」



と首をかしげたら、受け手はどう思うか。



コメンテーターが、



「正論ですね」



と深くうなづいたら、どうか。



こういった関係、制作する側、送り手の意図によって、視聴者はコントロールされていく、という普遍的なことを学んでから、さらに突っ込んで、番組内のコメンテーター役を体験してもらいました。







この、コメンテーターの役を、班ごとにやってもらったのですが、うちのクラス、班が6班あります。

最近ちょうど複数あったので、お題は、今話題になってる、これ。



マクドナルドの「歯」事件。

ペヤングの昆虫事件。

たこやきの、輪ゴム事件。

離乳食のコオロギ事件。

不二家のカビ事件。

冷凍ギョーザ事件。




コメンテーターも、会社を擁護する立場の発言と、会社を攻撃する立場の発言と、二通りありますので、両方やってもらいました。



1班。

「歯とか、ぜったいにあり得ませんよね」

「さし歯って、取れやすいんですよ。おそらく、歯、かぶせてた工場の人も今頃必死になって探しているでしょう。全部人間がつくってるんで、ありえます」



2班。

「輪ゴムとか、許せない。噛めないし、呑み込んだら、赤ちゃんとかおなかこわしますよ」

「ピンク色で、紅ショウガに見えたと思うんですよね。アルバイトの人も、完全に紅ショウガだと思っていますよ、これは。わざとじゃないですね」



3班。

「昆虫なんて気持ち悪くて、最悪の事件ですね」

「いや、そもそもコオロギってふつうに食べれます。ザザ虫だって食えるし、セミのカラアゲも、食えますよ」


コメンテーターの表情や身振り手振り、口調、言い方、すべてひっくるめて、

それらがとてつもなく大きな印象を、視聴者(受け手)に与えていくのだなあ、ということを学びました。







で、多くの子どもたちにコメンテーターの役をやってもらってから、





「世間のことをよく知っている人の役目だったけど、どうだった?」



と感想を聞いたら、



「こんなの世間知ってるとか関係ない。誰でも、何とでも言えるじゃん」





と子どもは恐ろしいことを言っておりましたな。

チャンチャン。





テレビ局