「せんせー、○○くんが、ちゃんとやっていませーん」

クラスの女子が、ぼくを叱る。



このことに、ぼくは毎日、こまってる。



なんでうちの女子は、みんな、あんなふうに、ぼくを叱るのだろう?



大きな声で、しかりつける女子。



「Tくん!はやくしてよ!」



「Tくん!ここ、すぐに片づけてよ!!」







なんで、あんなふうに、うちのママみたいなんだ?



あの女子たちは!



それでちょっとランドセルをさわっただけで、話しかけようとしただけなのに、





「Tくん!やめて!むこう行って!」



だって。



まったく。

うちのクラスのTくんの心情を、想像してしまいます。



なんともはや。



1年生で、もう、ミニママのような子がいますからね。



「せんせー、○○くんが、ちゃんとやっていませーん」






このセリフをいう時の、女子の顔つきといったら・・・。





そして、言われた方の、男子の顔つきも・・・。







女子・・・、心配になる。



男子は、よく分かっていない、ということが多いから、なにをしてほしいのかをしっかり伝えていけば、できるようになることが多い。



要するに、教えてあげて、学習すると、できるようになり、ほめてあげられる。



しかし、女子の、この、





「せんせー、○○くんが、ちゃんとやっていませーん」





この言葉の、なんとも微妙な、複雑な、なんだろう、この心理って。







○ちゃんとやらなきゃいけないのに、やっていない。

○ちゃんとやらないで、一人だけ楽をしている。ずるい。

○Tくんのせいで、みんなが迷惑する。

○わたしが注意しても、ちっとも聞いてくれない。もう、Tくんったら。

○なんでわたしが、「やめなよ、ちゃんとやりなよ」って言ってるのに、Tくんはわたしのいうとおりにしないのだろう。

○よし、こうなったら、先生に言っちゃおう。

○Tくんは、やんちゃ坊主で、悪者。

○わたしたちは、おりこうさん。









まあ、ふくざつよねえ・・・。





ところで、男子で、こうやって女子に騒がれると、本能的に、「しめた」と思う子も多いんであります。



女子に、キャーキャー言われるの、本来、男子は好きなんだよね。





男子は、騒がれるのが好き。

女子は、騒ぐのが好き。





つまり、この場合、男子も女子も、両方とも、自分の満足することをしている、というわけ。

無意識なのか??



合法的に、授業の勉強内容や課題から視線をそらして、ちがう世界で「あそべる」。



まんまと先生がこのワナにはまって、男子を叱ってくれたり、おまけにヒートアップして、いつもの先生とはちがった興奮した顔を見られたら、それはそれで見ものです。月9のドラマより、オモチロイ。







それで、わたし、そういう場合、大体3通りくらい、状況によって変えて対応する。





「せんせー、○○くんが、ちゃんとやっていませーん」



1)あらまー(苦笑)



一番シンプルなの、これ。



その後、



モノや道具を持ちながら、サッと切り替えるようにして、



「見ててね」




というだけで、男子も女子も、すぐにこっち見るから、もうそれだけで、叱る必要もなく授業に移行できる。



黒板にすぐになにかを書いて、



「これ」



と指さすだけで、状況がすぐに整うときもある。



叱らず済むね。









「せんせー、○○くんが、ちゃんとやっていませーん」



2)「あ、困ってる??えっと、今、だれが一番、困ってるのかな〜」




というときもある。



「一番困っている人、なんで困ってるのか、お話、してほしいな。できる?」



という。



頭のよい女子が立ち上がって、



「えっと、Tくんが、ほんとは字を書かなきゃなのに、勝手に絵をかいてるから」



「あそう。それであなたが困っているの?」



「えっと、お隣さんと見せ合う時に、Tくんが字を書いてないから・・・(話し合いが進まないから)」



「あそう。じゃ、私が困るから、Tくん字を書いてねって、やさしく伝えてみたら?」



わたしがちっともTくんを叱らないので、女子が困惑する。







「せんせー、○○くんが、ちゃんとやっていませーん」



3)「気になるの?なんで気になる?なにか、Tくんのことが心配?」



「うん」



「あそう。やさしいねえ。Tくん、よかったねえ。やさしい子がまわりにたくさんいて」



「・・・」



「Tくん、ここ見てね。じゃあ、クラス全員でここ読もう。さんはい」









つまるところ、まったく、関与いたしません。







こういう対応を続けていると、そのうちに、先生はちっとも叱らないのだ、と思うようになってくれる。



すると、不思議なことに、



「せんせー、○○くんが、ちゃんとやっていませーん」



が、なくなっちまうのネ。





「これ、やらなきゃだめじゃん!」



と言って、男子を叱る女子が居なくなってしまいます。





○せんせー、Tくんが、体操服しまっていません。

○せんせー、Tくんが、ごはんこぼしました。

○せんせー、Tくんが、まだじゆうちょうに絵かいてます。

○せんせー、Tくんが、先生のギター勝手にさわってます。

○せんせー、Tくんが、わたしのランドセル叩いてきます。

○せんせー、Tくんが、耳元で、大きな声でさけびます。

○せんせー、Tくんが、たいいくずわり、していません。

○せんせー、Tくんが、じゅんばん、ぬかしました。



これすべて、



「あそう」





で済みますね。基本的に。



そんで、



「えっと、それで・・・。今、だれが一番、困ってるの?」





このときに。






教室をつつみこむ、なんとも不思議な空気感が、たまりませんな〜。





「じゃ、困っている子を、たすけてあげようよ」



「・・・」